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2021年3月に読んだ漫画の感想(夏の前日、官能先生)

ぼくの大好きな「夏の前日」の作者吉田基己先生が、またろくでもない漫画(いい意味で)を描いていることにようやく気付いたので、さっそく、購入しました。

恋風」はアニメ化されているし、「夏の前日」も他に比べるものがない名作なんだけど、なかなかどうして、話題になりづらい作者なので、中々、新刊に気づくことができないですね。

問題作「恋風」のあまりの受け入れられなさで、「恋風」の作者の作品は一生読まないと心に決めているひとが多いのかもしれないです。

(ぼくも、正直、「恋風」の下着に欲情するシーンなどがあまりにも生々しい気持ち悪さで、「恋風」はアニメも漫画も再度見ようとは思えない…)。

夏の前日(1-5)/吉田基己

吉田基己作品の中ではとてもマイルドな名作

「恋風」は兎も角として、前作の「夏の前日」(全5巻)は、どちらかといえばだいぶマイルドな作品です。

生理的に受け付けられないような描写はなく、文化系大学生のぐにゃっとした自意識を思う存分に描いてくれた作品で、おとなぶりながら、いつまでも幼児性を捨てることができない哲夫くんに感情移入できる人にとっては、突き刺さって抜けない作品になると思います。

20代前半の自意識に刺さりまくり…

ぼくは、社会人一年目のときに「夏の前日」を読んで、巻末の哲夫くんすごろくも含めて、哲夫くんの行動のわかりみの深さと、昌さんの魅力にくらくらとしました。「大好きな漫画を5つだけ挙げろ」と言われたら、割と早めに候補に出てきて、最後まで作品の一つではありますね。さすがに人に無条件でおすすめできない漫画ではありますが。

尚、当時のぼくがむさぼるように繰り返し読んでいたのは「ラブロマ」と「夏の前日」と「惑星のさみだれ」だったりするので、どこまでも弱い男よ…という感じが否めないですね…。

官能先生(1-3)/吉田基己

吉田基己先生の最新作

最新作の「官能先生」(既刊3巻)は、40過ぎのおっさん(六朗)とうら若い女性(雪乃)の恋愛を描いた作品で、祭りの夜、幻想的な邂逅をした二人が、ひょんなことでまた出会い、互いに懸想し合うというストーリーです。(懸想し合うと言っても、不倫とか、兄弟間の恋愛とか、そういう倫理的なハードルがあるわけではないです)。

「官能先生」のタイトルの通り、主人公は売れない小説家で、出会いと同時期に、雪乃との出会いを元にしたポルノ小説を書き始めるのですが、主人公が雪乃との出会いを元にしたポルノ小説を書いたりするのもあり、「夏の前日」と比べるとどちらかといえばかなり「恋風」よりの気持ち悪さを内包した作品なのですが、ぎりぎり許容できるラインのわかりみのある気持ち悪さを持った作品です。

わからないでもない気持ち悪さが良すぎる

なんというか、本当に仲の良く、外にその場の発言を持ち出したりしない、仲間内の文化系男子だけでエロについて、高尚なそぶりをして語り合っているような、そんな感じの後ろ暗い楽しさがある作品ですね。

具体的には、1巻の『パンティストッキングはいけない!』とか、2巻の『斉木!君に教えてやりたいよ!知らなかろう?ポルノ小説を書きながらマスターベーションするのは最高に気持ちが良いぞ……』とか、『雪乃……今僕があなたの前で読んでいるのは実はポルノ小説なのだが、好きな女性の前で真面目なそぶりでポルノを愉しむという新しい趣味に目覚めたわけではないんだ。その点誤解しないでほしい』の独白とか、やはり吉田基己先生は天才なのではないか…と思わされることうけあいです。

わかるけど気持ち悪い、でも、主人公の人柄や雪乃への執着、趣味嗜好、性癖がビンビンと伝わってくる台詞。これ、本当に女性が書いてるのか、と思えるぐらい、ねじ曲がった文化系男性の性癖を肌に感じます。

気持ち悪いのに許容できるぎりぎりの線を付いているのが凄過ぎ

若くて美男っぽさのある「夏の前日」の哲夫くんと比べると、今回の主人公はかなり読者にとってハードルの高いおっさん主人公ではあるので、この気持ち悪さの純度で、ぎりぎりアリな作品を成立させているのは、純粋にすごいことだと思いますね。やはり、天才の所業ですわ。

まあ、この作品が世間一般でどこまで許容される作品なのかもよくわからないですが、とりあえず、「夏の前日」が肌に合った人であれば、おおむね気持ち悪さの先に耽溺できるのではないかと思います。

 

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